はじめに
長く空いてしまいましたが、このところ新しいヘッドフォン探しをしておりました。先日はレビューの仕上げとして、気になるヘッドフォンを色々と試聴したので、今回はその辺りの話をしたいと思います。
全域フラットを求めて
私は普段、音楽のリスニングに AudioTechnica のオープンエアー型ヘッドフォン ATH-AD500X をメインに使用しています。

ATH-AD500X の良い点は
・オープンエアー型なので通気性が良く蒸れにくい。
・低音域が比較的スッキリしている上、高音もきつくないので、長時間のリスニングでも聴き疲れが少ない。
・軽量なので、頭部への負担が軽い。
・価格が比較的リーズナブル。(1万円くらい)
などです。ただオープンエアー型なので構造的に仕方ない部分ではあるのですが、低音は若干控えめなので、聴き疲れが少ないと言うメリットがある反面、たまにはドシッと重たい重低音を聞きたくなる事もあります。そんな訳で今回は乗り換えと言う訳ではなく、バリエーションと言う意味で、密閉型(一般的には構造的に低音を出しやすい)のヘッドフォンを物色してみました。
まずはフラットで色付けが少ないと言われるモニターヘッドフォンを中心に、個人ブログや動画サイトなどを見て、世間の評判や皆が感じている傾向などを調査してみました。相当数のレビューをチェックした甲斐あって、機種毎のおおよその特徴は掴めたので、ターゲットをかなり絞り込む事は出来たのですが、最後はやっぱり実機を試聴してみたくなり、少し面倒ですが、実機を試聴しに行きました。
機種別インプレッション
今回の主なターゲットは密閉型ですが、個人的興味と、密閉型との比較もしたいのでオープンエアー型の機種も沢山試聴しています。なお、コネクタがスマホに接続できる3.5mmプラグではない機種に関しては試聴できなかったので除外しています。
AKG K240 Studio
タイプ:セミオープン / ドライバ径:30mm / インピーダンス:55Ω / 重量:240g / ケーブル脱着可能
まずは「安いのに高音質」と言う評価が多い AKG の セミオープン型ヘッドフォン K240 Studio。6~7千円程度で購入できるので、これで音が良かったらマジ凄いと言う事になりますが、私が聴いた印象としては、低音も高音も控えめで、まぁ、値段なりの音と言う印象でしたね。ネタ的には「おっ、これスゲー」って言いたかったのですが、そうでは無かったです。ただこう言う傾向の音って、聴き疲れし辛いので、長時間の動画編集とかゲームなんかには向いているかもしれないけど、音楽を楽しむ目的では選ばない方がいいかな。それと K6xx や K7xx シリーズに比べて予想外にイヤーパッドが小さく浅かったので、耳の収まりの悪さを感じましたね。側圧は特にキツくは感じなかったし、重量は軽いのでその点はGOODでした。

AKG K240 MK2
タイプ:セミオープン / ドライバ径:30mm / インピーダンス:55Ω / 重量:240g / ケーブル脱着可能
K240 MK2 は K240 Studio のバージョンアップ版で、ダイアフラム(振動版)やハウジングに改良が加えられているようです。聴く前は「K240 Studio と同じような音が出るんだろうな」と高を括っていたのですが、一瞬で判る程、かなり高音が伸びるようになってますね。心臓部であるドライバー改良の恩恵は予想以上に大きかったようです。
なので音は K240 Studio より断然こっちの MK2 の方がお勧め。価格が K240 Studio よりもかなり上がってしまいますが、ケーブルやイヤーパッドを多く付属させる事で価格に妥当感を持たそうとしている雰囲気はありますが、正直、追加のケーブルやイヤーパッドなしで、もう3千円程安くしてくれた方が人気出るように思うけどどうなんだろうか・・・。装着感は、基本的に K240 Studio と似たような感じですね。

AKG K271 MK2
タイプ:密閉 / ドライバ径:30mm / インピーダンス:55Ω / 重量:240g / ケーブル脱着可能
こちらは K240 MK2 の密閉版とも言えるモデルで、K240 MK2 同様に「バリモーションテクノロジー」と「Two-Layerダイアフラム」が採用されており K240 Studio に比べて高域が伸びているように感じますが「バスチューブ機能」により敢えて低音の膨らみを押さえてバランスを整える設計のようで、密閉型の割には低音は控えめですね。これだと低音の量感はオープンエアー型と大差ないので、低音目的の人は選ばない方がいいかも。

AKG K371
タイプ:密閉 / ドライバ径:50mm / インピーダンス:32Ω / 重量:240g / ケーブル脱着可能
これはケーブルがついてなかったので、音は聴けなかったけど、装着はしてみました。多くのレビューでは装着感の評価は上々 のようですが、悪くもないけど、もっとゆったりしたのを想像していたので、思っていたよりはイヤーカップが窮屈な印象でしたね。トリッキーな回転式の折りたたみ機構が採用されていますが、その辺りの耐久性とか大丈夫なのか少し心配な感じはします。弟分にK361と言う廉価モデルがあり見た目は同じですが、素材のプラスチックパーツが多くなり、ドライバーのコーティングも無しになります。ケーブルは脱着可能ですが、コネクタの形状がK371はAKG定番のミニXLRですが、K361は、ミニプラグにロック機構がついた奴になります。

AKG K612 PRO
タイプ:オープン / ドライバ径:40mm / インピーダンス:120Ω / 重量:256g / ケーブル脱着不可
聴いてびっくりしたのがコレ。動画サイトのバイノーラル録音のデモでは、結構バランス良く聞こえてたんだけど、実物はかなり籠った音で、高音が全然出てませんでした。余りに高音が控えめだったのでそう言う意味でびっくりしました。「え?どうしたの?」って感じ。もう少し良い音かと想像していたので予想外。デモ機が壊れてたのかなぁ?スマホで聴いたからインピーダンスが120Ωと高めなのが関係してるのかな?しかし、これがガチの音なら買わないかな。

高めのインピーダンス(Ω)の機種は、出力音圧レベル(dB)が低い事が多いのでスマホなどのモバイル機器で聴く場合に音量を稼げない事があるので、モバイルメインの方は避けた方がいいかもしれません。ヘッドフォンアンプやオーディオインターフェイスに接続するなら、高いインピーダンスにはメリットもあるんですけどね。
AKG K702
タイプ:オープン / ドライバ径:45mm / インピーダンス:62Ω / 重量:235g / ケーブル脱着可能
K240 Studio や K612 PRO と比べると明らかに高域が綺麗です。あとなんと言っても装着感がいいね。イヤーパッドが深くて大きくて材質が良くて、耳たぶも余裕をもってイヤーパッド内に収まるし。K7xx シリーズ全般に言える事ですが、装着感は今回試聴した中ではトップクラスに優しいかな。

AKG K712 PRO
タイプ:オープン / ドライバ径:40mm / インピーダンス:62Ω / 重量:298g / ケーブル脱着可能
当たり前だけどAKGもやっぱり音は価格なりに良くなっている感じはしますね。K702 と比べてもさらにレベルアップしている感じはする。重量は若干重めだけど300g未満なら一般的には許容範囲内。ただヘッドバンドがAKG定番の自動調整タイプなので、重いと長時間の装着で頭頂部への負担がどうなるか気になるところではあります。まぁ、オレンジラインがカッコイイし、お金が余っている人がAKGのオープン買うならこの辺りを選ぶのもいいのかな、ただ、高いので私は買わないけど。

SONY MDR-7506
タイプ:密閉 / ドライバ径:40mm / インピーダンス:63Ω / 重量:230g / ケーブル脱着不可
聴いてビックリの第二弾。なんじゃコリャです。国内向けスタジオモニターの定番 MDR-CD900ST に相当する海外向けモデル(少し価格が安い)との事ですが、高音が想像を絶するシャーリッシャリでした。大げさに言うと3Wayスピーカーのウーファだけを取り外しちゃったみたいな音です。これはとてもじゃないけどフラットな聴感とは言えないよね。

MDR-CD900ST は低音スカスカでシャリシャリすると言うのは多くの人が言っている事ですが、このMDR-7506 はそれよりはマシと言う風に聞いていましたが、普通にシャリシャリですね。録音の荒捜しするのにはいいのかもしれないけど、これリスニングには使えるレベルじゃないよね。疲れちゃうよ。
あと装着感に関しては、側圧はそんなに高くないけどイヤーパッドが薄くて小さすぎるね。耳が全然収まらない・・・殆どオンイヤーと思っていた方がいいね。ケーブルはカールコードで脱着はできません。
Sennheiser HD 280 PRO MK2
タイプ:密閉 / ドライバ径:不明 / インピーダンス:64Ω / 重量:285g / ケーブル脱着不可
かなりチープな雰囲気の音ですね。低音も高音も出てないし、少し聞いただけですぐに試聴を辞めました。少なくともリスニング目的には全くお勧めできないですね。そのくせ安いとこでも普通に1万2千円くらいはする。「いやー、モニターヘッドフォンだから~」と言われるかもしれないけど、もっと音の良いモニターヘッドフォンは普通にあるからねぇ・・・。

Austrian Audio Hi-X15
タイプ:密閉 / ドライバ径:44mm / インピーダンス:25Ω / 重量:255g
メーカーの存在は知っていましたが、たまたまあったので試しにどんなもんかちょこっとだけ試してみましたが、音は少し遠いような雰囲気でしたが、やさしく割とフラットな感じで籠ったような感じも無かったです。それとこのヘッドフォン、イヤーカップ内側が広くて深くて耳が超楽ちんな雰囲気でいい感じです。密閉型でここまで装着感の良いヘッドフォンは他に余りないんじゃないかな。今回、初めて試してみましたが、密閉でこの装着感と言う事で、ちょっと興味を持ちました。

AudioTechnica ATH-AD500X / 900X / 2000X
500X タイプ:オープン / ドライバ径:53mm / インピーダンス:48Ω / 重量:235g / ケーブル脱着不可
900X タイプ:オープン / ドライバ径:53mm / インピーダンス:38Ω / 重量:265g / ケーブル脱着不可
2000X タイプ:オープン / ドライバ径:53mm / インピーダンス:40Ω / 重量:265g / ケーブル脱着不可(左右2本出し)

ATH-AD500X は私が普段使っているヘッドフォン、500X の周波数特性を基準とすると 900X で高域のキラキラ感が増して 2000X で高域に加え低域も伸びると言った雰囲気ですかね。上位機種の方が筐体の高級感も如実に増しますね。ATH-AD???X シリーズは開放型の割には低音出ている印象でしたね。但し、2000Xは安い店でも5万円はするので、まぁ、買わないよね。ちなみに過去に700Xと1000Xって言うモデルがありましたが、いつの間にか販売終了になったようですね。

残念なのはイヤーパッド。ベロア生地なのは凄くいいんだけど内径が小さ過ぎて、結局半分オンイヤーみたいになっちゃうので、最初はパッドの柔らかさがあるからいいんだけど、徐々に不快感が増すタイプ。ちなみに、私のATH-AD500X は社外の内径の大きなパッドに交換済みなので装着感は改善済みです。オープンだからかイヤーパッドを換えても殆ど音が変わらないのが良いです。側圧の強さに関しては、購入時はオーテクらしく強めだけど強制的にヘッドバンドを広げる事で幾らでも好みに調整可能です。私の 500X はかなりユルユルです。

AudioTechnica ATH-M20X ATH-M30X
20X タイプ:密閉 / ドライバ径:40mm / インピーダンス:47Ω / 重量:190g / ケーブル脱着不可
30X タイプ:密閉 / ドライバ径:40mm / インピーダンス:47Ω / 重量:220g / ケーブル脱着不可

モニターシリーズの安い方から2機種ですが、ATH-M20X はさすがに少し音にチープ感が出てくる感じがしますが ATH-M30X は「おっ、なかなか良い音出るやん」って感じで予想外に良かったです。これなら音楽目的でも全然いける感じでした。まぁ、個人的にはATH-M30X 以上が合格ラインかな。装着感は、2機種共に側圧が上位モデルの40Xや50Xより弱い感じで、イヤーパッド自体は薄めなんだけど軽さも相まってか、そんなに悪くなかった印象です。音楽は楽しみたいけど、ヘッドフォンに1万円以上お金を出したくない方には ATH-M30X はお勧めですね。但し、上位機種とは異なり、ケーブルが脱着出来ないので、その点はご注意下さい。

AudioTechnica ATH-M40X
タイプ:密閉 / ドライバ径:40mm / インピーダンス:35Ω / 重量:240g / ケーブル脱着可能
実はこのモデルが私の今回の大本命でして、期待を持って聴いてみました。感想としては、おおよそ私が想像していた通りの音でした。非常に高低のバランスも良く、音質も好みです。バスドラのアタック感なんかはパンチがあって、兄貴分の ATH-M50X よりも強いんじゃないかと思いましたね。音質は1万円前後の機種の中ではNo.1じゃないかな。ただ、レビューで判っていた事ですが、側圧強いですねー、この日試聴した中で、最も強いんじゃないかと思いました。装着してすぐに耳の下側あたりに痛みが出ました。(ヘッドバンド広げて緩める事は可能と思う)イヤーカップの穴も小さめで、耳たぶを少し折り曲げてギリギリ収まるくらい。3mのカールコードとストレートコードが付属。

AudioTechnica ATH-M50X
タイプ:密閉 / ドライバ径:45mm / インピーダンス:38Ω / 重量:285g / ケーブル脱着可能
日本でモニターヘッドフォンと言えば SONY の MDR-CD900ST が有名ですが、海外ではどうやらこの ATH-M50X がその地位にいるようで、評判も上々なので外す事は出来ません。音の傾向は ATH-M40X に似ている感じですが、フラットな再生帯域がさらに広い雰囲気ですね。SONY の MDR-7506 と比べると高低のバランスは圧倒的にマトモ。
低域は ATH-M40X よりも低いところまで再生出来ている感じですが、低音が強過ぎるかと言われると、そんな事はないかな。M50X は M40X よりも低音が多いと言うレビューを良く見かけますが、実際の周波数グラフを見てみると、ただフラットに下まで伸びているだけで、M40Xの方は70Hz付近を中心に盛り上がりのコブがあるけど、M50Xはそのコブがなくて殆ど平。さらに40Hz以下も下がり方がなだらかな感じ。

なので実際に試聴してみるとソース(低音に含まれている周波数成分)にもよるかもしれませんが、バスドラのアタック音なんかは40~160Hz付近が盛り上がっている M40X の方が強く感じました。それとは逆にシンバル辺りの高域は M50X の方が少し強い感じですね。
側圧に関しては M40X よりは若干弱い感じ。イヤーパッドはサイズ自体は M40X と同じに見えるが素材が M50X の方が柔らかいものが採用されているので M40X よりは優しい雰囲気ですが、側圧は決して弱くはないです。側圧最強は M40X で、それに続く2位の側圧って感じです。ただ、ATH-AD????Xシリーズ同様、強制的にヘッドバンドを広げる事で、かなり緩める事は可能とは思います。3mのカールコードとストレートコードに加え、1.2mのストレートコードが付属。
最後に
以上、私が試聴した主要ヘッドフォンの印象でした。次回は、最終的に私が選んだヘッドフォンのレビューを書きたいと思います。お楽しみに!
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